前回は、眼底出血があったKさん(70歳 女性)の出血が消えた症例を元に、一般的な原因・治療の説明や問診から考えられることについて書きました。
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今回は触診して分かったことについて書いていきます。
眼の症状は、首、腹部、全身も影響している
・眼について
指で触るとやはり硬くなっていて、軽く触ってもKさんは強い痛みを感じていました。
これは眼球を動かしている筋肉(外眼筋)や眼窩脂肪が硬くなっていると考えられます。
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眼も筋肉で動いています。
他の筋肉と同じように、眼の使い過ぎは眼の筋肉を疲労させてしまいます。
筋疲労は筋肉が硬くなっている状態です。
筋肉が硬くなると血流も悪くなります。
このために血管壁に圧力がかかることで出血の原因となった可能性が考えられます。
・首について
Kさんが症状を訴えられていた通り、筋肉が硬くなっていました。
首の後ろ側の筋が特に緊張していました。
その中でも、頭と首を繋いでいる筋肉(後頭筋群 下図・真ん中)が硬くなっていました。
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これらはKさんが書道の先生をしていてうつむきになることが多く、前に傾いた頭を支えるために首の後ろ側の筋肉が常に緊張することで硬くなったと考えられます。
このために頭(眼)の行く血流が悪くなっている可能性があると考えられます。
東洋医学で言うと、後頚部には風池(ふうち)や天柱(てんちゅう)といったツボがあって、眼に関係しているようです。
実際に臨床でも、後頚部の治療をすると眼の見え方が良くなったりと言う経験があります。
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・腹部について
これは腹大動脈(身体で一番太い動脈)が硬くなっていて、軽く触っても痛みを感じられていました。
血管も神経が支配しています。
継続的に緊張状態(交感神経)が続くと血管は慢性的に硬くなります。
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もちろん一般的には若い人の方が血管は柔軟性があり、年齢と共に硬くなっていく傾向はあります。
ですがKさんは慢性的な疲労があったこともあって、さらに血管が硬くなっていたのだと考えられます。
そして、太い血管が硬くなっているということは、他の細い血管も硬くなっていると考えられるのです。
・全身について
また全身も筋肉が硬い印象がありました。
筋肉が硬くなっていることは、
・血流が悪い
ことでもあり、
・老廃物が溜まっている
ことでもあります。
血流が悪い、疲労が溜まる、というのは、細胞での「酸素と栄養」と「炭酸ガスと老廃物」の交換が上手に行われていないことでもあります
こういったことからKさんの治療は、
・眼をのシコリを緩める
・首の筋肉を緩める
・腹部の血管を緩める
・骨格筋を緩める
これらを行なって全身の血流を良くすることにしました。
本人が取り組まれたこと
Kさんは先生をされるくらい頼りになる方でしたが、しんどくても断れないことで体調を崩されていましたので、私からは「断る時は断る」など、無理をしないことに気を付けてくださいとお伝えさせていただきました。
食事に関しては添加物に気を付けたり1日2食をされていたので、そのまま続けていただきました。
治療内容はこういった感じで、週一回で行っていったのですが、その結果、Kさんの眼底出血は消えてなくなったのです。
それでは次回は治療の経過について書きます。
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